はじめに | ヒートアイランドの対策である、屋上緑化の効果を検証するためには、以下の気象学の基本原理を理解しておく必要があります。 以下の式は、理想的な裸地で成り立つ式ですので、屋上緑化された植生のある地表面ではもう少し複雑な関係にあります。 |
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基本原理 |
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原理 | 気温地表面の熱収支の式 |
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1)放射収支の式 Rn = S↓+ S↑+ L↓ + L↑ S:放射のうち、短波放射の成分 L:放射のうち、長波放射の成分 |
2)熱収支の式 Rn = G +H +Le G : 地中熱流量(地中への熱の移動) Le : 潜熱フラックス(蒸発による水蒸気熱移動) H : 顕熱フラックス(気温変化による) |
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上記の、1)と2)の式はバランスしています。 地球の熱源は太陽です。太陽から短波放射(目に見える光)は、地表面で反射されたり吸収されたりした後 長波放射になって放出されます。また、地面に吸収された熱は、地中に伝導したり、水蒸気や空気によって空気中に運搬されます。 また、地表面の植物は、地中の水分を蒸散することにより、自分の温度を一定に保っています。 都市気候:ヒートアイランドの影響を小さくするには、 潜熱(Le)を増やす=水蒸気を増やす=水の保水量を増やす がポイントになり、計測もその点を効果的に測定する方法を選択する必要があります。 緑化はもちろんのこと、透水舗装をすると、保水効果+土中水分上昇効果があります。 熱フラックス関係の計測センサーはこちら |
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測定 方法 |
風向風速 |
一般風と、植生近傍の局地的な風を両方測定する必要があります。 |
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超音波風速計 |
![]() 風車型風速計 |
![]() 3杯風速・風向計 |
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稼動部分がないので微風速の計測、鉛直風速の計測に適しています。 | 広いレンジの風速に適合します。一般風の測定に適しています。 | 経済的なセンサーで、風速のみの場合、3杯風速計だけでも計測可能です。 | ||
気温 湿度 |
結果としての気温、湿度を測定します。 ビルの上空は風が強く一般風が卓越しているので、地面近傍は大きな気温湿度勾配があると考えられます。 |
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気温湿度センサーに日射よけのシェルター | 左のタイプよりは、高精度なタイプ | 非常に経済的に調べたい場合は、このロガー付センサーが野外ではお勧めです。 | ||
地表面温度 | ![]() |
地表面温度(植生面)は植生によって大きく変わります。 棒状の温度計では正確に測定できない面の温度をリモートセンシングで測定します。 |
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降水量 蒸発量 蒸発散量 |
雨量計 |
![]() 蒸発計 |
![]() 小型ウェイングライシメータ |
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転倒ます方式により、0.5mm単位の雨量を測定します。 | 水面の水位変化から蒸発を求めます。標準は、クラスAパン(120cmφ)ですが、小型も作成可能。水面からの蒸発なので過剰評価する傾向があります。 | 土壌の重量変化を直接測定します。植生を含めた総蒸発量が測定できます。 | ||
正味放射量 (放射収支形) 主に、2種のセンサーがあります。 |
![]() 4成分放射収支計 |
![]() 放射収支計 |
![]() 日射計 |
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高価だがセンサーが4つついており、S↓+ S↑+ L↓ + L↑を別々に測定して波長毎の違いを評価することができる。 | 正味放射量Rnを直接測定する。 ポリエチレンドームを使用しているので、定期的な交換が必要です。 安価なタイプ |
簡易的に測定する場合、日射量をまず、測定します。 | ||
地中熱流量 熱伝導度 |
地中への熱の移動量を測定します。 | |||
![]() 地中熱流量 |
![]() TP01 地中熱伝導度計 |
![]() TP02 熱伝導度センサー |
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熱電対を原理とするセンサーでGを直接測定する。 ばらつきがあるので、数点の測定が望ましい。 |
ヒータが内蔵されているので、熱伝導度を直接測定可能 | ニードル式の熱伝導センサー 実験室内キャリブレーション用 |
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地温 | 地温や、表面温度の測定に使用します。 | |||
![]() Pt温度センサー |
熱電対温度センサー |
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温度を正確に測定できる。 G項のチェックにも使用する。 |
精度は少々悪いが相対的な差温を多点測定する場合に適する。 | |||
土壌水分 | 地温、地中への熱の移動には土壌中の水分が大きく影響します。 また、植生からの蒸発散にも影響します。 |
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TDR土壌水分計 |
テンシオメータ |
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誘電率が土壌水分に依存することを原理とするセンサー。 乾燥から湿潤まで対応 塩分には弱い |
土壌中の水分の吸引圧力を測定する。植物にとって有効な水分量を測定することができる。 |
ランク | 目的 | 必要な機器1 | |
T | 気温変化のみ 知りたい場合 |
気温・湿度*2つ以上 |
![]() 小型野外温湿度ロガー 2台以上 |
U | 植生の違い 舗装の種類による違いを 調べたい場合 |
気温・湿度を実験区画の 数量以上 |
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V | 気温湿度変化の原因を 少し詳しく調べたい場合 |
風向風速 日射量 雨量 気温湿度 地温 土壌水分量 |
主な外的要因と大きく影響する 要素を測定します。 |
W | 詳細に調べたい場合 | 風向風速 日射量 正味放射量 地表面温度(赤外放射温度計) 雨量 気温湿度 地温 地中熱流量 蒸発散量 土壌水分量 |
熱収支式の各項を測定して、 評価します。 |